「ねぇ、今度の土曜日さ」 「ごめん。土曜日は部活なんだ」 「あ、そっか」 彼女は一部の間では「ガクブ」と呼ばれる吹奏楽部に所属している。毎日、朝から晩まで練習をするというかなりハードな部活だ。しかし、彼女は文句も言いつつ、毎日音楽室に通っている。 「今月の休み、いつ?」 「今月は無いかな」 何年も吹奏楽部を続けていると、そんな言葉もさらっと言えるようになるらしい。 「ごめんね。もうミーティング始まっちゃうから」 そう言って教室を出ていく彼女。その背中を見送ることしかできない。 彼女はいつも楽しそうだ。音楽の話はアイドルとかよりも吹奏楽の話が好きだ。いつだったか、吹奏楽が好きな理由を聞いたことがあった。 「音楽と楽器が好きだからかな」 それだけだった。それだけで彼女は凄く幸せそうだった。それだけで幸せになれる彼女が好きだった。 彼女のようにそれだけ夢中になれるものは知らないけど、いつかそれだけ夢中になれるものを見つけたいと思った。 彼女の背中に「ガンバレ」と呟いて教室を出た。 [先頭ページを開く] [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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