小説

♦卒業2012☆


 卒業式が終わり、騒がしい校門の前で卒業証書と花束を持つ蒼生は人を待っていた。


「あおい」


 手を振りながら公平が近づいてくる。後ろには優二がたくさんの花を抱えてついて来た。


「遅くなってごめん。優二が後輩に挨拶してたら時間かかってさ。しまいには女子泣かせるし」

「だって、俺は彼女に気がないんだからしょうがない」

「さらっとひどいこと言うね」

「そうか?」

「そうだよ」


 公平と優二は高校の三年間ずっと同じクラスだったから、とても仲がいい。蒼生は2人を見ながら小さく笑った。


「さ、帰ろう」

「腹減ったー」

「どっか行くか」

「俺ハンバーガーがいい」

「蒼生は?」

「何でもいいよ」

「じゃあハンバーガーで決定!」


 近くのファストフード店で中小を食べ、公平は用事があると言って先に帰って行った。


「なんか、3年て早いな」

「うん」

「蒼生は進学だっけ?」

「専門学校にね」

「楽しいといいね」

「うん。優二も進学?」

「うん。専門学校」

「そっか」


 住宅街を2人は並んで歩く。平日の昼間の住宅街はとても静かだった。

「それじゃ、またな」

「あっ、優二・・・」

「何?」

「私さ、優二のこと好きだよ」


 うつむきながら蒼生は言う。


「俺も、蒼生のこと好きだよ」

「ほんと?」

「本当。でも、俺よりも蒼生のこと好きだって言ってくれる人がいると思うよ。」

「え・・・」

「じゃあ、またな」


 優二はそう言って、蒼生から離れて行った。

 夜、ご飯を丁度食べ終えた蒼生のところに公平が来た。


「ちょっと話せる?」

「うん」


 玄関の前で、公平はあおいのことが好きだと言った。


「え?」

「別に付き合ってほしいとかじゃないよ。気持ち伝えたかっただけ」

 公平は笑顔でそう言った。その笑顔はいつもとちょっと違う気がした。


「返事は、あおいに任せるから。それじゃ、おやすみ」

「うん。おやすみ」


 帰っていく公平の背中を見て、優二が昼間に言っていたことを思い出した。



ー数年後。

「よ、あおい」

「蒼生、また待たせた?」

「ううん。今着たとこ」


 3人は変わらずにいた。お互いの気持ちを知っていても、何も変わらなかった。公平の笑顔はいつもの笑顔だった。



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