小説

♦ただ、青い空☆



 いつからか、空を見上げて考え事をするようになった。そうしようと決めた訳じゃなくて、気づいたらそうなってた。きっと彼女のことが関係あるのだろう。
 今まで合った人の中で一番大切だった彼女は、もうこの世界にはいない。
 3年前、なんの前触れも無く彼女は自殺をした。一人暮らしだった彼女の死を一番最初に知ったのは僕だった。

人が死ぬのはこういうことなんだと感じた。

 音もなく、ただそこにいるだけの彼女を僕は見つめてしまった。いないようでそこにいる彼女の存在は、僕の涙腺を簡単に緩めてしまった。
 電話で友人に声にならない声で、思考が完全にストップした頭でなんとか状況を伝え、数十分後には彼女の家の前に人だかりができた。彼女のことなど気にも止めていなかっただろう人たちがコソコソと話しているのがムカついて仕方なかった。

彼女に逢いたい。

 3年経った今でもそう思う。彼女が生きているとき眺めていた空を見上げながら、逢えるはずもない人を待った。
 待っても来ないことを知りながら、ただひたすら待った。彼女は僕にとって必要な人だった。彼女がいなくては何も出来ないほど、僕には彼女が必要だった。

逢いたい。

逢いたい。

 思えば思うほど、胸が苦しくなった。悲しくなった。あの日緩んだ涙腺が再び緩むことはなかったけど泣きそうだった。
 毎日がただ流れていく中で、僕はまた空を見上げ、彼女の存在がどれだけ大きいものだったかを考えた。


END☆





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