小説

♦好き。☆


「後藤君、私後藤君が好きです。付き合ってもらえませんか」

「ごめん。それはできない」

二人しかいない教室の空気が止まった。

「ひとつ聞いていい?」

「なんですか?」

「俺のどこが好きなの?」

「全部って何?」

「後藤君の全部が好きなんです。」

「君は俺の何を知ってるの?」

「え・・・」

「全部ってことは、俺の全てを知ってるってことだろ?他人に話したことないことまで全部。」

明が鋭く冷たいことをいくつか並べると、彼女は目に涙を貯めて出て行った。彼女とすれ違いに功輔が入ってくる。

「キツいこと言うね」

「聞いてたのかよ」

「まあね」

功輔は自分の席に座り、帰る準備を始める。

「明はさ、俺にも話してないこといろいろあるよね。」

「あるよ」

「少しは頼っていいんだからな」

「うん」

「明は抱え込みすぎだよ」

「そうかもな」

何か言おうとした功輔次の言葉を聞かずに、明は「じゃあな」と言って教室を出て行った。
功輔は小さくため息をつき、作業をすることに集中した。

END

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