小説 2

甘くないラブレター そのに



「文乃」

たぶん、二十何年かの人生の中で一番大きい声を出したと思う。君以外のその場に居た人も、一斉に俺を見た。

「待ってるから」

君は頷かなかった。でも、驚いた顔の後に浮かんだ笑顔が答えだった。やっぱり君が好きだと思った。

それから三年が経った。俺は、君への手紙を書いている。僕らが連絡を取るための手段に選んだのはメールでも電話でもなく、二ヶ月に一回程度の手紙だった。職業柄、文字を打つことは慣れていても、手紙を書くことは苦手だった。それでも、毎回何日も悩んでポストに投函した。君からの返事がほしくて。

久しぶりに日本に帰ってくる君を迎えに空港に行った。三十近い女性に言う言葉ではないかもしれないけど、君は前よりも成長していた。守りたいとか、大切にしたいとより思わせた。俺はそういうキャラじゃないなら口には出さない。でも、君なら分かってくれる気がした。


つづく

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